皆様、お久しぶりです。



この前ツイッターに久々にログインした時、声を掛けてくれてありがとうございました。
新潟文学工房のヤマダさん、山田佳江さん、隙間社の伊藤なむあひさん。
そして、電書ちゃん。嬉しかったです。
僕がなかなか浮上してこないので、DMも作家さんからいただいたりしています。
本当にありがとうございます。
リアルが暇だからこそ、ログインってなかなか出来ないものですよね(言い訳)。

電書ちゃん主催のSF創刊誌『にごたな』

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皆はもうこれ読みました?
僕はこの書籍を、いつか歴史的背景から解題してみたいと思ってたりします。

今日のテーマは電書ちゃんのロボット繋がりということで(どこが?って思った人、後で説教な!)、
『機動戦士ガンダムUC』のワンシーンを集約して解体分析をしようと思います。
◆意外な引き出しと思った方。
◆そんなの解説する必要があるのかと思った方。
僕はニュータイプではないけれど、エゴを強化した改造人間なのです。
今しばらくお付き合いいただけると幸いです。
 

『スタークジェガンvsクシャトリヤ』戦という文言でググった際、かなりのヒット数が出てきます。
この事から、ガンダムファンと言わずとも多くの人達がこの戦闘シーンに惹起され、感化され、また胸が踊ったのだろうなという事が伺えます。
『ガンダムUC』の冒頭僅か3分程のシーンなのですが、
なぜこれ程までに地球人、いや、失礼。人が感動するのか。
そのギミックを紐解こうと思います。

前提として背後にある物語と歴史を説明すると、ネオ・ジオン紛争後の時代設定(アムロとシャアの戦いが一応終結する『逆襲のシャア』の後日談から)であると言う事です。
実はこの冒頭の戦いは、これから始まるガンダムユニコーンにとってかなり重要で、情報量の多い戦闘シーンなのです。
宙域に怪しく浮かぶ戦艦のドッグから物語がスタートします。その中に積載されていた緑色のモビルスーツがクシャトリヤ(ファンの通称はキャベツ(笑)確かに)。ネオ・ジオン軍残党『袖付』のマリーダ・クルスと言う女性パイロットが搭乗するNT(ニュータイプ)専用機です。このマリーダは、NT(ニュータイプ)と呼ばれる超能力と特殊な資質を人工的に造り出された兵士です。原作では、身も心も人間にボロボロにされていた過去を持つ、かなり悲惨な過去を持つパイロットです。ニュータイプは、宇宙に人間が出た時代に、ある種の人間だけに備わる進化的過程というか、特殊な共感性を併せ持つ新人類です。人間の心が読めたりするため、戦闘の中で先読み出来たり、ロボットであるモビルスーツの性能以上の知覚能力を発揮出来る人間です。ガンダムが普遍的な人類の認識という課題と、共感性を説いたという点もガンダムが絶大な人気を博している要因のひとつでもあると思います。
当作品でも、人類の生き方や思想が初代とは違ったアプローチで描かれています
 

マリーダが出撃する際の艦長との会話。
「目標捕捉。足の速いジェガンがいる。特務仕様かもしれない」
「偶然の出会いではないっていう事だ」
つまり、この戦艦を追跡してきた特務仕様のモビルスーツ小隊である事を察知しているのです。現実世界の話ですが、戦闘の大多数は諜報と索敵能力だという話があります。このクシャトリヤというモビルスーツは出撃前から広域レンジで索敵出来るという機能を単体で持つ化物マシンである事が伺えます。
そして、目視で機影が見えるところまで到達すると、ドンピシャで特務仕様のスタークジェガンが、ジェガンD型(一般兵士の搭乗するモビルスーツ)僚機を2機従えていた事が判明します。
映像の中では、2機のジェガンの機体識別番号『RGM87』は判明していましたが、特務仕様のジェガンは『UNKNOWN』となっています。
一瞬のシーンなのに、完璧に設計されているからこそ出来る芸当です。
 

この特務仕様のジェガンこそ皆が『名も無きエースパイロット』と称賛するスタークジェガンなのです。設定の中ではロンド・ベル隊所属クラップ級巡洋艦『キャロット』所属指揮官機とされています。小説版より部隊名までは出ているもののパイロット名はありません暗礁域に侵入しようとする所属不明の艦隊を追跡する特殊任務をおった小隊長という事です。
設定から読み解ける部分だけでも多くが判別しますが、スタークジェガンのパイロットの年齢は確定出来ません。一年戦争からネオジオン抗争などを生え抜き、しかも、ロンド・ベル隊所属というだけで生粋の戦闘軍人であることだけは確かなのです。
情報ソースは不確かなのですが、このスタークジェガンのパイロットはアムロやシャアなどニュータイプによる人間離れした戦闘を間近で観ていたとされています。戦闘シーンに戻ります。
クシャトリヤは索敵し、ジェガンタイプ3機の行動予測をコクピットのモニターに映します
モニターには敵機体(ジェガン)の攻撃射程が映されており、通常のジェガンよりスタークジェガンは攻撃レンジが広くなっています。
スタークジェガンは戦艦を追い、僚機2機でクシャトリヤを足止めする戦略を実行しますが、察知したマリーダは「戦艦(ふね)は追わせない」と言い放ち、ファンネルと呼ばれるニュータイプ専用の特殊兵器をばら蒔きますこのファンネルという兵器は小型のビットを超能力のようなもので複数撒き散らし、自動追尾して、縦横無尽に動き回るビットからレーザーを照射するといういう凶悪極まりない無線式の誘導兵器です。
機体の周囲を魔法のように旋回し、取り囲まれたが最後。
オールレンジ攻撃によって殲滅されるまでに時間はほとんど要しません。
隊長であるスタークジェガンが携えていた僚機のジェガンD型2機は瞬く間に、周囲をファンネルのビットで取り囲まれて蜂の巣にされてしまいます。ファンネルが追尾している様子は、マリーダ・クルスのヘルメットに反射したモニターで観察することができます。このタダやられるだけのシーンですら情報量が多いからガンダムは凄いなと思うのです。全ての映像に意味があります。
最初のジェガンは、初撃のレーザーで左腕に付属しているシールドを焼き切られ、ジェガン機専用のビームライフルだけとなります。間髪もなく旋回してビットを撃ち落とそうと構えた右手ライフルで2発撃ちますが(それでも迎撃出来た事が凄い)、全方向から照射されるレーザーに右手も断ち切られ、最後の武装(腰部ランチャーも切断、ビームサーベルはあったが有効的でない近接武器のため)である頭部にあるバルカンポッドを使用して迎撃しようとするもファンネルの攻撃で頭部ももぎ取られ、ほとんど同時に両足、そして最後は手足首のないままきりもみ状態で胸部コクピットを切断されて撃墜されてしまいます。このやられ方は『ガンダムF91』に出てきたビルギット・ピリョ搭乗機のヘビーガンのやられ方と酷似しているので、オマージュもあるのかもしれません。

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1機目が撃墜された時には、2機目のジェガンは既にライフルを握っていた右手をもがれ、シールドで身を固めながら旋回し、頭部バルカンで反撃をしていました。このシーンは僚機のジェガンは自動照準アシスト機能を使用していた為にクルクル旋回していたのです。
戦闘機等にも備えられているように、敵機にオートエイムを合わせ射撃する機能です。つまり、ジェガンが動き回るファンネルをオートエイムで撃墜しようとした結果、逆にそれが災いしてしまった。
およそ機械の動きとは思えないような360度立体的に、自由に動く十数個のファンネルのビットを自動走査して反撃しようとしたが故に、あたかも混乱状態で旋回しながら為すすべなく落とされる。
この2機目のジェガンが撃墜される寸前にスタークジェガンは戦艦を後回しにし、僚機を助けに戻ります。
劇中では喋りませんが、ガンダムファンなら既知の通信によって隊長機であるスタークジェガンは、
『自動照準を切れ!』
と絶叫して部下の僚機を救おうとしていたのではないかなと思います。
しかし、あまりに強力なファンネルという兵器の前に手も足も出ず、僚機は無惨に瞬殺されてしまいます。
スタークジェガンは携行していた対戦艦用のハイパーバズーカの散弾を即座に撃ち、牽制。この躊躇の無さ、判断力は並みの兵士ではないように思えます。戦艦を撃墜するための武装をいち兵士(仮に士官であっても)である彼が、自らの判断によって即座に撃つという事は軍属の人間であれば、通常許可を要するように思えます。しかし、彼は相手がニュータイプか強化人間で、尚且つファンネルという兵器を持つ化物モビルスーツであると分かり、即座に持てる全戦力を物量投入して戦う判断を下したという事が伺えます。彼の判断で間違った部分が唯一あるならば、1機で追撃してきたクシャトリヤがファンネルを搭載していた事を見抜けなかった事のみでしょう。やられた僚機のジェガンも新兵等ではなく、2機で1機を倒すなど容易いか、並みの敵ならば足止め出来るだけのパイロットだったのではないでしょうか。でなければ、僚機だけに任せて戦艦を追わなかったと思います。それほど信頼をおいていたベテランパイロットだったのだと推察出来ます。現に迎撃が有効ではありませんでしたが、あの状況で反撃しようとしていたのが証明となっています。但し、この場合は油断や傲慢もあったかもしれませんが、敵であるクシャトリヤはあまりにも分が悪すぎました。
スタークジェガンは散弾のバズーカを撃ち、ファンネルを使う暇を与えないように両肩に装着された3連ミサイルランチャーを両肩計6発全弾射出します。このシーンの中にコクピット部が映りますが、ここもかなり情報量が高いです。『逆襲のシャア』のネオジオン紛争時代にモビルスーツはコクピットや操縦モジュールを大幅に改変したという設定があるのです。そのひとつにパイロットの握る操縦桿を戦闘機時代から使っていたスティック型ではなく、直感的に操作出来るように球体のアームレイカーと呼ばれる操縦桿に切り替えた経緯がありました。しかし、グリップしない事から被弾時の衝撃で手を離してしまう等の理由から不採用とされ、元のスティック型操縦幹に戻した経緯が説明されています。
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そして、薬指や中指を使用する複雑なコントロールモジュールを命令実行する事でモビルスーツを動かしているという事も分かりました。
ここにも2つ意味合いが感じ取れるのですが、スタークジェガンのパイロットは熟練した手つきで僚機をやられた怒りで取り乱したり、ファンネルに対する恐怖心で混乱することもなく確実にパイロット操作をこなしています。クシャトリヤとファンネルを捕捉している液晶モニターに何らかの操作をしていましたが、これこそオートエイムアシストをオフにしてアナログの戦いに持ち込む作業だったのです。ファンネルという兵器は前述したように超能力のようなものなので、精神を集中させる必要があります。
クシャトリヤに搭乗するマリーダは爆裂するミサイルの波を全て掻い潜り、スタークジェガンへと近づき再度新しいファンネルを排出し、猛攻を再開します。
ここでスタークジェガンは発射しきったハイパーバズーカを捨て、肩部ミサイルランチャーユニットもパージして身軽になります。またもスティック操縦幹のコントロール操作が出てきますが、マリーダの行動を予測していたかのように冷静沈着に素早くこなします。初見で観ているこちらは、
『えっ。まさか、このパイロットはニュータイプ?』
と言わんばかりでした。
少なくともガンダム史実の中で名を馳せたパイロットなのでは、と思ったのは僕だけではないと思います。
スタークジェガンが凄い機体であるというのは、デッドウェイトとなった装備を着脱しても機体バランスを崩さないよう、綿密に調整されている事です。普通はバランスが悪くなってしまうのに、これはメカニック技術所以の部分もあると思います。プラモデルを売るためじゃないとは言えませんが(笑)
名も無きパイロットが選択した戦術は、襲い掛かってくるファンネルと入れ違いにクシャトリヤまで最大出力のスピードで接近し、ファンネルのオールレンジ攻撃を無効化。その上でアナログの格闘戦を仕掛ける事でした。ファンネルの渦の中に飛び込んでいき、しかも、その際にコクピット部分を機体の増加装甲された腕で守っているのです。ファンネルのレーザーは脅威ですが、一発の威力は薄くコクピットを貫通するほどではありません。しかも、それを増加装甲で守り、最大スピードの中で喰らったところで致命的ダメージはないと踏みます。

超人的に強い飛距離の長いアウトボクサーに対して、インに潜り込み、得意の近接戦闘で戦おうというのですから、胸も熱くなります。

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近付く際に腕部の追加ユニットからビームサーベルという剣を抜くのですが、実はここのシーンはこのパイロットの人間像を描いてもいます。このスタークジェガンというモビルスーツは1機だけではなく、特殊な任務に使用するため数は多くありませんが、劇中にも複数出てきます。設定では、腕部の追加装備にはグレネードランチャーを格納するか、ビームサーベルを格納するか2パターン選べるのです。
このパイロットの装備がグレネードではなく、サーベルを選択していたという事は近接戦闘が得意なパイロットだった可能性は非常に高いのです。事実、ファンネルの渦を被弾しながらも掻い潜り、クシャトリヤに近接戦闘を強いる事に成功するのですから。
近接戦闘に関しては並みならぬ自信があったのではないかなと思います。
勿論、対ニュータイプ戦用の対策訓練や普段の絶え間ない努力をきっと怠らない優秀なパイロットだった事は言うまでもありません。
ここまでだけで十二分に凄いですが、名も無きパイロットの活躍はまだ続きます。
すれ違い様に、同じくビームサーベルを抜刀したクシャトリヤと一太刀交わすも、勢い余って最高速度で斬りかかった為、一瞬体勢を崩してしまいます。しかし、高度なパイロット技術と綿密な調整を施されたスタークジェガンはすぐさま機体の体勢を戻して、再度斬りかかります。この辺りでもたついていたら、折角ファンネルを無効化したにも関わらず、不利な状況になってしまいます。しかし、こうも受け取れます。スタークジェガンは最大出力、最大速度でマシンの性能を極限まで使用して、クシャトリヤとようやく五分であると。一方のクシャトリヤ搭乗のマリーダも本当に戦闘しているのか疑いたくなるような涼しさで操縦していました。


スタークジェガンは凪ぐような斬撃を繰り出し、
クシャトリヤと殆んど互角の戦いを繰り広げます。マリーダのクシャトリヤは特別仕様の超人用モビルスーツです。カタログスペック的には、スタークジェガンは特務仕様とは言え量産型の汎用型。機体のポテンシャルは遥かに劣っていますが、太陽と月の距離感を利用して優位な位置取りから状況を作り出します。パワーでも劣っているはずなのに、つばぜり合いになりクシャトリアとスタークジェガンは文字通り火花を散らして一歩も退きません。太陽が背にきたときに斬りかかり、つばぜり合い。次いで月が背にきたときに刺突に構えを変えて懐に飛び込みます  目眩ましと遠近感を鈍らせてからの一撃。斬りかかる攻撃を多用していたのは、この刺す攻撃の為に積み上げていたフェイントだったのです。彼は懐に潜って、クシャトリヤのコクピットを一撃で刺して倒そうと策を練っていたのです。月と太陽の位置を利用し、相手に距離感の誤認を与え、しかも斬る攻撃ばかり終始する事で突く攻撃に対して油断させる。トリッキーかつ技術に裏打ちされた作戦を瞬時に生み出し、それを実現しようとしたパイロット。
しかし、惜しくも最後の最後。突進してくる事を見越していたマリーダはクシャトリヤの背にある、大きな翼のような四基のサイドバインダーから、バーニアを逆噴射させてスタークジェガンの機体を仰け反らせます。一瞬の隙間を縫って一刀両断に切り伏せてしまうのです。
ファンがよく言うのは、コクピット付近を真っ二つにされて爆発しなかった為に、パイロットが生存している可能性を示唆しますが、この後にマリーダはスタークジェガンパイロットの残留思念を汲み取ります。あれは死後の思念で、だからこそコクピットのコアごと焼き切られて、中で絶命したようにしか見えません。残留思念の声が比較的イケボ(イケメンボイス)ではなく、オサボ(オッサンボイス)なので若くはないのだと思います。歴戦を潜り抜けてきた熟練のパイロット。ガンダムの世界でも3機撃墜のスコアでエースパイロットと呼ばれるみたいですから、彼は『名も無きエースパイロット』だったのでしょう。
一般兵でありながら、量産型のチューンアップで胸熱の戦いをしたスタークジェガンのエースパイロットに敬礼したいと思います。
敬礼!("`д´)ゞ

と、まぁ、ここまで読んでくれたガンダムの情報量の多い、それでいてリアルに計算され尽くした作品はやはり偉大です。
これを機会にファンの方は設定や考察を掘り下げたり、まだ観ていない方は興味を持ってくれたらと思います。
また、この『ガンダムUC』では、これまでのモビルスーツの様々なバリエーションが出てくるのも特徴であり、醍醐味でもあります。しかも、ガンダムシリーズは往年からプラモデルやフィギュアを売るためにデザインするビジネス先行型の…ゴニョゴニョ。
機会があれば、また別のガンダム作品解題もしてみようかなぁ。ビジネスモデル解題から入るガンダム世界なんてのも面白い企画かもしれません。しかし、ガンダムの歴史とメインテーマを紐解くなんてしたら、冗談抜きで10年は掛かりそうです。

誰か僕にガンダムの小説書かせてくれないかなぁ。
ガンダムの小説は子供の頃から、殆んど読んでるから崩さないだろうし。しかし、未来へ進めば進むほど、大人になれば大人になるほど、ガンダムは真理をついていると深く考えさせられます。それこそ、時代の思想を先読みした優れた作品だと痛感します。そして、更に凄いのはガンダムの作品の魅力や凄さを、僕のように言葉に置き換えなくとも、追い付いているファンが沢山いるというのが考えられない位凄い事な気がします。

僕も現在、新しい作品を誠意制作中です。間がかなり空きましたが、書きたい事を書きたいと思います。
そして、新たにリニューアルしてみたいという野望もあったり、なかったり。

それでは、近いうちにまた。 

夏居暑 2017・4・24